後立山南部 蓮華岳 (2799m) 2010年7月31日
所要時間 3:08 扇沢−−3:33 登山口−−4:44 雪渓末端−−5:49 雪渓最上部 5:56−−6:32 針ノ木峠−−7:19 祠 7:21−−7:23 蓮華岳 8:04−−8:41 針ノ木峠−−8:57 雪渓最上部−−9:24 雪渓末端−−10:17 登山口−−10:35 扇沢
概要
扇沢から蓮華岳を往復。出発時から断続的に雨が降っており、山頂で1時間程度粘ってもガスが晴れることはなく真っ白な世界だけだった。雪渓はまだまだたくさん残っており、早朝の締まった時間帯は滑りやすくアイゼンが必要(ピッケルは不要)。特に下りはアイゼンの有無で歩行速度が大きく変わる。上部の傾斜がきつい区間は全て夏道が出ており安心して歩けた。今は雪渓最上部が最終水場で、支流から水を取る。針ノ木峠から蓮華岳間の稜線は雪は消えていた。ガスっていたので祠と三角点のどちらが高い確認できなかった。
睡眠時間確保&駐車場確保のため土日\1000割引を諦めて金曜夜に豊科ICを降りて扇沢へ。この時間はまだ駐車場はガラガラだが既に山に入って空っぽの車もたくさんある。柏原新道入口の駐車場はほぼ満杯だった。未舗装の市営駐車場奥の木が張り出したエリアに駐車することができ、日中の日差しを避けられて理想的な場所を確保できた。明日はできるだけ早い時間に山頂に立つべく、睡眠時間3時間で起床することにして酒を軽く飲んで寝た。
未明の扇沢駅 | まだ無人のゲート横より歩きだす |
翌朝2時半に起床、軽く朝飯を食って出かけようとした、車の屋根を叩く雨粒の音が・・・。まだ真っ暗な空を見上げると星が見えない。ただ、この時期は雲海の雲の層の下である可能性が高く、雲海を突き抜ければきっと雨が止むだろうと歩きだすことにした。周囲では続々と車が上がってきており、私とは逆にこれから仮眠だろう。
昨年6月だったか、スバリ岳に登ったときにこのルートは歩いているので真っ暗闇にライトでも迷うことなく歩けた。一般車通行止めの舗装された車道はショートカット登山道でほとんどパスし登山口到着。車が2台止まっているが大沢小屋や針ノ木小屋関係者のものだろう。樹林帯に入ると木が雨避けになるが、落ちてくる粒が徐々に大きくなってきたので途中で傘の出番だ。派手ではないが登山道の両側から笹が出っ張っているところがあり、濡れた笹で足や靴下が濡れるのがイヤらしい。枯れた沢や水が流れる沢を横断、幅の広い枯沢は、真っ暗な中では対岸の登山道の続きが分かりにくくちょっとばかりうろつく場面もあった。
車道を離れて登山道に入るところ | 雪渓末端に到着 |
大沢小屋ではヘッドライトの男性が外にいてビックリ。小屋番だったのかもしれない。まあ、あちらもびっくりしたかもしれないけど。なおも樹林中を進み、沢音が近づいて樹林を出ると雪渓末端が近い。6月の時は当然ながらもっと手前で雪渓に乗れたと思うが、具体的にどの辺で雪渓に下れたかは覚えていない。雪渓に出ると樹林が無くなるし雪が白いのでかなり暗くても周囲が見えるようになる。雪渓は遮蔽物がなく冷たい吹き降りてくる風が強く傘のままでは歩くのが難しそうで、ここでゴア上下を着る。
雨の降る中、雪渓を登る | 雪渓を振り返る |
この付近がいちばん傾斜がある | 傾斜が少し緩む |
最初は雪が汚れた踏跡が明瞭だが徐々に薄まってくる。とは言ってもこのまま雪渓本流を詰めていけばいいので細かいルート取りを気にする必要はなく、歩きやすいところを拾って登ればいい。早朝は雪が良く締まって靴底が減った登山靴ではやたらよく滑って歩行スピードが上がらず、久しぶりの6本爪軽アイゼンの出番となった。常用している12本爪と比較して何とも頼りないが、へたった靴底と比較すれば雲泥の差で一気にスピードアップする。6本爪では傾斜が急だと対応が難しいが、針の木雪渓は最上部のみそんな急傾斜だが途中は問題ないことは分かっているので安心して登れる。最上部は既に夏道が完全に出ていることはネットの情報で分かっている。既にライトは不要な明るさになっていた。
雪に冷やされた風に吹かれながら登っているので、上下ゴアの格好でも汗だくにならずにすんだ。雨量は濡れるか濡れないか微妙な量で、腕まくりしてズボンの裾もまくり上げて歩いたがさほど濡れずに済んだ。頭にはこの天気では用無しの麦藁帽子だが、ひさしの張り出しが大きく雨粒が眼鏡に付着して視界が悪化するのを防止する面で大活躍した。
雪渓末端 | 雪渓末端 |
峠まで雪が消えた夏道を歩く | 前半は岩ゴロゴロの沢歩き |
順調に高度を稼いで雪渓最上部に到着、ここでアイゼンを脱いで少し腹ごしらえして歩きだす。雨は下界より弱まってゴア無しでも大して濡れないと判断し、ここでゴアを脱いでTシャツ半ズボン姿に変身した。最初は沢沿いに夏道が出ていて少し左岸を歩いて右岸に戻り、小規模な雪渓の脇を登っていく。この高さでとうとう雲の層に突入したが雨はかえって弱くなったようだ。このまま止んで山頂でガスが晴れればいいのだが。
傾斜がきつくなると左岸をジグザグに登り始める | 左岸のジグザグ道 |
たぶん残雪期にアイゼンを装着した傾斜がきつくなる場所からは、左岸側にジグザグに夏道が続くようになる。見下ろす雪渓の角度はかなり急で、今の雪の硬さでは問答無用でアイゼンとピッケルが必要だろう。滑ったら止まらないこと請け合いだ。ジグザグ道を登りきると霧の中からボーっと人間の影が出現し、針ノ木岳方面へと登っていった。ここが針ノ木峠だ。小屋周辺はもう雪は無いが針ノ木雪渓側は峠まで雪が付いていた。小屋から出発する人の姿は全員上下のゴアを着ているのに私だけTシャツ半ズボンの浮いた姿。既に3時間半くらい歩いているので体の発熱量が異なるのでしょうがない。稜線に出ると風が強いと思ったら拍子抜けで風は弱かった。
針ノ木峠から針ノ木岳側 | 針ノ木峠から蓮華岳側 |
蓮華岳目指して登る | これでもガスが晴れた方 |
休憩することなく蓮華岳へと向かう。既に深いガスの中で先行者がいるのかいないのか全く見えない。道はまともなので大沢小屋周辺のように濡れた笹がはみ出しているなんてことはたぶんないだろうから先行者がいなくても大丈夫か。この標高ではまだ立ったハイマツが中心だが、少し標高を上げるだけでハイマツの高さがみるみる低くなっていく。それと同時にアルプスらしい岩稜帯が多くなる。これで晴れていれば素晴らしい尾根歩きなのだが・・・・。なだらかな岩稜帯(というか砂礫地)ではコマクサが可憐な花を咲かせていた。前回の記憶が無いが、やっぱコマクサが咲いていたはずか。ここまで来て先行者の姿が見えた。ゴアのみなので小屋から往復だろう。
2754m峰付近 | コマクサがたくさん咲いていた |
地図を出すのが面倒だったし今回はGPSも持ってこなかったので現在位置が不明だが、まさか山頂標識が無いなんてことはないだろうから山頂を見落とすことはなかろう。しかし視界がないこの状態ではニセピークに騙されることが多く、2754m峰や2750m峰では山頂標識が無いか探してしまった。ただ、蓮華岳は遠くから何度も見ていて東西に長い山頂部を持っていることは知っていたので、ある程度標高が上がってからは水平移動が長いのは覚悟していた。
2750m峰を越える | 三角点峰手前の祠があるピーク |
三角点峰直下の山頂標識 | 三角点峰(蓮華岳山頂) |
2750m峰を越えて僅かに下り、登り返したところに祠が立っており、休憩する人の姿があってここが山頂らしかった。ただ、山頂標識が立っていないのがちと不思議だったので、ここで初めて地図を出して山頂には三角点があるはずだと知り、周囲を見たが三角点が見当たらない。ここで休憩しようとして防寒着を着込んだが、どうやら本当の山頂はまだ先なのだろうと歩みを進めると僅かに下って登り返した先に、後立山でよく見られる山頂標識が立っていた。そしてその先には確かに三角点が。間違いなく蓮華岳山頂だった。ガスで全く視界無し、これじゃわざわざ早朝に出発した意味が無かったなぁ。山頂標識前で記念撮影する登山者も天気予報が外れて残念がっていた。5,6人のパーティーはザックを背負って北葛岳方面に下っていった。天気図を見ていなかったので分からないが、もしかしたら今日は湿った南西の風が吹き込んで山の稜線だけガスっているのかもしれない。もしそのパターンなら今日はガスが晴れるのは期待できないかなぁ。気温は12,3℃あるが日差しは皆無で山頂付近はなぜか風が強く体感温度は寒く、防寒着を目いっぱい着込んでも少し寒いくらいだった。とりあえず8時くらいまで粘ろうと寒さに耐えたが全くガスが切れることがなく、これ以上は無駄だと諦めて下山を開始した。
下り始めるがガスが薄まってもここまで | ガスの向こうに針ノ木小屋 |
峠から下る | 岩小屋沢岳の稜線が見えてきた |
雪渓上には点々と登山者の姿 | 雪渓最上部 |
峠に下ると小屋の前で休憩している登山者の姿が。まさか小屋泊まりの人が今から出発なんてわけはないので、たぶん扇沢から上がってきた先頭組だろう。針の木雪渓へと下っていくと続々と上がってくる登山者とすれ違うようになる。今は雨は降っていないのでゴアを着ている人は皆無だが、こちらは防寒対策の意味でゴアを着ているので稜線は雨だと思われたかもしれない。雪渓最上部まで下るとやっと体が温まり、ゴアを脱いでTシャツ半ズボンに変身、アイゼンを付けて快調に下っていく。登ってくる登山者はけっこうお疲れモードの人が多く、かなりペースダウンしているように見えた。足元を見るとほとんどの人は軽アイゼンを装着しているがノーアイゼンで登っている人も数人見かけた。さて下りは大丈夫だろうか。もっとも、滑っても長距離滑落するような傾斜ではなく、雪渓上に大きな落石や木もほとんどないので、滑っても大きな怪我はないだろう。ただし、この時期の残雪なので表面は泥だらけで、こんな上を滑ったら真っ黒けだ。
下りの途中から雪渓を見上げる | 雪渓下部も人の列 |
6本爪なので12本爪と違って踵に体重をかけても爪が無いし、この時期の残雪はかなり硬くて踵でも蹴りこめない固さなので、6本の爪のどこかが雪に刺さるよう足の置き方を考える必要があった。また、雪の表面はスプーンカット化が進んでおり、これまた足の置き方を考えないと滑る原因となる。それでも慣れてくれば快調に飛ばすことができ、登りにかかった時間の半分で下ることができた。滑れればもっと時間短縮が可能だが、この時期の残雪表面状況ではそれは無理だ。残雪期なら下りで楽しめるのだが。徐々に雲の高さが上がっていったようで、岩小屋沢岳の稜線が見えるようになった。このまま回復に向かうのだろうか。
雪渓末端 | アイゼンを付けて次々と出発していく |
夏道を歩く | 笹がはみ出した区間 |
こんな枯れ沢が夜間はやっかい | 大きな枯れ沢は2つある |
雪渓末端ではたくさんの登山者が雪渓歩きに備えてアイゼン装着中。ほとんどアイゼンを使うことがない無雪期登山者が多いようで、アイゼンの付け方を仲間から教わっている姿も見られた。こちらはアイゼンを脱いでザックに収納し、夏道を歩きだした。まだまだすれ違う登山者は多く、時々立ち止まって道を空ける。もう藪は乾いていて笹に触れても濡れることはなくなった。いつの間にか薄日も差すようになり、下界は稜線とは大違いだ。気温も大違いで汗をかかされるようになり、沢が登場すると顔や腕を洗ったりタオルを水で冷やしたりと放熱対策だ。
登山口 | 関電トンネル入口 |
ゲート横登山口 | 爺ヶ岳南尾根も雲の中 |
扇沢駐車場は満杯 | 市営駐車場も満杯 |
登山口から車道ショートカット区間まで下ると時刻的に登りの人の姿は少なくなり、合計3人しかすれ違わなかった。早朝は無人だった登山口の詰め所には人が入っており、入山者に登山計画書を書かせていた。扇沢の駐車場は既に満杯状態で市営駐車場も満杯、その下の林道も駐車でいっぱいだった。たぶん先週の3連休はもっと凄かっただろう。そして来週のお盆も凄いだろうなぁ。車に到着して着替えを済ませ、ゴアを干しつつしばし昼寝。扇沢の標高なら日影にいれば快適な気温だった。